セーターと母と仲間と (11) 変わらない

  • 2016.02.29 Monday
  • 12:45

手編みのセーターで皆さんの賞賛を浴びる作戦♪の支援体制も整い

ネコ:あきれてものが言えません。
にやりネコ:病気でたいへんなお母さんに何させる気にゃ。
kyu:はい。仰るとおりで…。でもね、でもね、
  お母さんもちょっと嬉しそうだったのね♪
ネコにやりネコ:どこまで都合が良いかにゃ怒り

仕事で外に出てそのまま帰れる日があって、
miko-mikuは急いで病室へ向かいました。

お隣のベッドのおばあさんにカーテンの隙間から軽く会釈のご挨拶。
それから奥の母の方に進みました。「来たよ〜。」

母は体を起こしてセーターを編んでくれていました。
入院してからはずっとゆかたを着て過ごしていた母。
セーターを編むのにゆかたの袖から見えている腕先が、
あらためて見るととても細くて、一瞬どきっとしました。

* * *

体重は多分かなり落ちていたと思うのですが、
顔も痩せず髪も変わらなかったので、
母自身がよく「お見舞いの人が来てもね、
布団かけて顔だけ出してるとね、あんまり変わっていないと思うのか、
深刻な雰囲気にならなくてすむのよ。助かるわ〜。」と
笑いながら言っていたっけ。

本当に綺麗だった母。
病気になってからは、体はとても辛そうだったけれど、
顔かたちの美とは別の、何か特別な澄み切った美しさが
母を包んでいました。

家によく遊びに来ていた私の友人達が、皆、
入院した母に会いに来てくれて、
何度言われたことでしょうか。
「お母さん、本当に綺麗だね。」

* * *

でも、やっぱり細くなった腕を見ると切ない。
病気の重さも、辛さも、不安も一切口に出さず、
家のこともすごく心配だったと思うのに、
すべてを委ねてくれた母。

今思えば、覚悟のような気持ちが、
あんなにおだやかな優しい笑顔を導いていたのでしょうか。
もともと愚痴めいたことをほとんど言わない母でしたが、
強がるとか気丈といったものと無縁の、でも何か
揺るぎのないものをmiko-mikuは感じていました。

体は相当たいへんだったはずだけど、
でも淡々とセーターを編んでいる母。
miko-mikuの声に顔を上げたその顔にはいつもの微笑みが。

先ずかけるべきは案ずる言葉ではなく、
miko-mikuの嬉しさを。

「わ〜、一気に進んだね〜♪」

(続きます)
 

セーターと母と仲間と (10)編んであげる

  • 2016.02.22 Monday
  • 23:26
手編みのセーター賞賛大作戦手

のはずでしたが、
「持って歩いてちょこちょこやるよー」と言っても、
仕事は忙しいし、病院にも行くし、なかなか時間がとれません泣き

そもそも、編み物超初心者なので一目ずつ、丹精込めて丁寧に…

ネコ:つまり、遅いんですね。
kyu:はい。
にやりネコ:セーターどうなるにゃ。

 heart heart heart

会社の親睦日帰り旅行まであと1週間を切ってしまい、
妄想うっとりのエネルギーも枯渇気味で
ピコンピコンピコン、点滅する胸のタイマー。シュワッチ!

にやりネコ:余計なこと言ってにゃいで。
kyu:はい。

ようやく実現の困難に気が付き始めたmiko-miku汗
会社に行く足取りも重くなる一方です。

miko-miku:おはようございます(声小さい)。
ヤブさん :わー素敵なセーター。
miko-miku:まだです。
ヤブさん :え〜、持って歩いてちょこちょこやってるんでしょ。
miko-miku:ま、まあね。
ヤブさん :がんばってね。セリフ一所懸命練習してるんだから。
miko-miku:なんだか嬉しそうですね、ヤブさん。
       うー、負けるもんか。絶対仕上げてみせますよ!

 heart heart heart

でも病室で明らかにしょんぼりムードのmiko-miku。

お見通しの母が笑いながら言いました。

「そうは簡単に進まないでしょ。」

「え、セーター? うーん、頑張ってるんだけどねー」

「どんな感じ?」

「えへへ」

照れ笑いと共に取り出した編みかけの前身頃に
母が思わず吹き出しました。

「あー、これは厳しいわね」

「なかなか進まなくって…。思ったよりたいへんだな。エヘ。」

茶化して言ったつもりでしたが、母は真顔で答えました。

「時間ないものね。家のことも全部あなたに任せちゃって」

あーだめだめ。それ言わなくていいよ、お母さん。
労ってもらったりすると、すぐ泣きじわっときちゃうから。

「ちゃんとやってるからね。大丈夫、大丈夫。
お父さんも手伝ってくれるし。新聞とか、ウヒヒ。」

ちり紙交換エピソードを思い出し、二人でちょっと笑い顔。
母が不意に言いました。

「置いていきなさい。お母さんやってあげるから。」

「え? えー、いいよ。そんな、入院してるお母さんに
編んでもらいましたなんて大ひんしゅくだもん」

「いいから。ただし間に合うかどうかわからないわよ。
でも、とにかく置いていきなさい。編んであげるから。
目を減らすところとかできないでしょ。」

「できないっ。減らすもなにも全然進んでいかないんだよ。
困ったなーと思って。でも、いいのかな。ホントに頼んでいいの?
ごめんね、お母さん。こんなことさせちゃって。
絶対無理しないでね。」

思いつくのはいいけど、いつも1人ではやりきれなくて、
結局助けてもらうmiko-miku。トホホ。

申し訳ない気持ちと、
助かったー!と、ほっとした気持ちと
もうないと思っていた母の手作りに触れられる嬉しさと

病院を後にしたmiko-mikuに
いろいろな想いがこみ上げてきました。

(続きます)
 

セーターと母と仲間と (9)揺れる想い

  • 2016.02.20 Saturday
  • 00:47
先ずはセーターの身頃部分をというわけで、
母に編み出してもらった後を、
増やし目も減らし目もなく、
ひたすら単純なメリヤス編みで進んで行ったmiko-miku。

でも、モヘヤのふわふわした毛糸だから、
プレーンな編み方でもしっかり味わいがあります手

     heart

ネコ アレサ:いえ、それは毛糸の質感ではなく、編み方が下手で編み目にムラが…
にやりネコ ペコ :ママの記憶が、限りなく美しく塗り替えられてるにゃ。

kyumiko-miku:”いつもポジティブ矢印上”と言ってください。

     heart
     
とにかく、何が何でもあと10日で完成させなくちゃ。

「えー、自分で編んだの? 信じられない!」
親睦旅行でみなさんの賞賛が一斉にmiko-mikuにきらきら 妄想♪ きうっとりkyu

双葉 双葉 双葉 双葉 双葉

母の病状が良くないのに、仕事を続けていてよいのだろうか。
本当は、私にずっとそばにいてほしいのではないか。

でも、前例のない採用で得たお仕事で、
ここで頑張らないとというプレッシャーもあって

何よりmiko-mikuがその仕事に就いたことを
母がとても喜んで

自分の入院で家族が生活を変えることを
母は望んでいなくて

いつも言っていた「今までのままでいいから」。

 双葉 双葉 双葉

職場は創造的な制作や企画が多くて、
働く人も本当にユニークで面白い人ばかりで
miko-mikuより年上の人がほとんどでしたが
子ども心が一杯の多芸多才の明るい人が多かったので
忙しかったけれど、毎日がとても楽しかったのです。

母のことで心配な辛い気持ちが、
職場にいる時は思わず忘れる時もあって

毎日起こる面白い事を
母に話して一緒に笑えることも
とても救いになっていました。

 双葉 双葉 双葉

miko-miku:おはようございます!
ヤブさん :わー、素敵なセーター。
miko-miku:まだです。

ヤブさんはニヤリと笑い、「大丈夫?」

miko-miku:大丈夫ですよー手。持って歩いてちょこちょこやってますから。
キヨコさん:楽しみだわ。どんなセーターかしら。

心から期待してくれているのがわかるキヨコさんのキラキラの瞳きらきらです。
いろいろがんばるぞ〜ぴのこ:)
  
双葉 双葉 双葉 双葉 双葉

猛烈に時間に追われる毎日の中で、
わざわざ慣れない編み物を始めたのは
もしかしたら、ただひたすら編み目を追って
心を空っぽにするひと時がほしかったのかもしれません。

(続きます)
 

セーターと母と仲間と (8) このまま編めばいいからね

  • 2016.02.16 Tuesday
  • 10:56
ネコ アレサ:もう…、ようやくセーターが再登場。
にやりネコ ペコ :ママ、どうするつもりにゃ?
kyumiko-miku:どうするもなにも、ただあの時起こったことをありのままに、
ネコにやりネコ :進めー。
kyu  :はい m(_ _)m。

   heart heart heart

母が「そういえば、セーター編むの、どうした?」と聞きました。

いろいろな想いが一度にこみ上げて来て、
ちょっとぼーっとしていたmiko-mikuですが、
我に返りました。

返りましたが、元々抜けています。忘れています…。

「うん? セーター?」

「編んで会社の行事に着て行くんじゃなかったの?」

母は、半ばあきれ顔で、でもいつものmiko-mikuに戻った様子を見て、
笑いました。

「あーーっ。そうだった。お母さんに教えてもらおうと思って
持って来たんだった。」

「まったく、棒針編みなんてしたことないのにいきなりセーターなんて、
苦戦してるんじゃないかと思って。見せてごらん。」

「うーん、苦戦する前のレベルって言うか…えへへ、
実はこれから編むところなんだけど。じゃーん!」

言いながら毛糸の玉を取り出したら、さすがの母も完全あきれ顔に。

「来週の土曜日だったわよね。無理したらいけないから
もう今回はやめておきなさい。」

「大丈夫だよ。持って歩いてちょこちょこやるから。そういえばね、
この前テレビで香港の街角みたいな番組やっててね、
おばさんが歩きながら編み物してたの! 歩きながらこう両手で
しゃかしゃか。道の角も編みながら曲がって行ったの。
すごかったなー。」

母が即座に言いました。

「だめ。絶対に真似しちゃだめよ。前も
回りながら落ちかけたでしょ。絶対にダメ!」

学生時代の体育の授業が社交ダンスで、ターンで落ちこぼれていた
miko-mikuは、組む人に迷惑をかけてはいけないのでとにかく
集中して練習あるのみと、家ではもちろん、通学途中の駅のホームでも
電車を待つ間も惜しんで猛特訓。たまたま母と出掛けた時に、
「ほら見て。こんなに回れるようになった」と嬉しくてクルクル回りながら、
そのままホームから落ちて行きそうになったのでした。

miko-mikuは小さい頃から、いつもお母さんをヒヤヒヤ、ハラハラさせてたね。

「外でやると危ないから。ここに置いておいて少しずつ編んだら?
手伝ってあげるから。」

母はそう言いましたが、頑固と能天気が合体しているmiko-mikuは
譲らず、「大丈夫!。がんばるよ〜。」と、ここでも宣言。

仕方ないわねという感じで、母はベッドで体を起こし、
本を見ながら棒に最初の目を作って、あっという間に何段か
編んだのでした。そして棒の繰り方をmiko-mikuに見せながら言いました。

「当分このまま編めばいいからね。」

(続きます)
 

セーターと母と仲間と (7) 夜更けの出前

  • 2016.02.11 Thursday
  • 22:07
「お父さんやるねー」と
ひとしきり二人で小さな声で笑い合った後、

母が話し出しました。

「お父さん、昨日の夜、ずいぶん遅くに来てね。」

「え、昨日? 病院来たの、お父さん。帰って来るのとっても遅かったよ。
『仕事で会合あるから今日は病院寄れない』って昨日の朝言ってて、
 今朝も何も言わないから…。
 じゃあ、miko-mikuが帰った後に、お父さん来たんだ。」

「11時過ぎだったかな。」

「えー。見つかったら怒られちゃうね。お母さん起きてたの。」

「うん。」

少しの静寂。

そうだよね。なかなか眠れないよね…。

母の短い頷きに、
口に出しては何も言わないけれど、
きっといろいろ想うことがあるのだと
胸がつまってしまうmiko-mikuでした。


黙っていると涙が出そうになってしまうので、
早く何か言わなくちゃ。


「急ぎの用事だったのかな。」

「ううん、会合の帰りだって、ちょっと酔っ払ってたわ。」

「ええー。夜中に酔って病院はまずいよねー。」

「カーテンのところから『よっ』って片手挙げてね。」

「想像できる。」

「『お寿司の折を作ってもらったから』って、
  そこの台のところに置いて、」

「うん。」

「『じゃ』って帰っちゃった。」

そう言って微笑んだ母はうれしそうで、
miko-mikuも一緒に笑ったけど、
だけど、とっても切なくて、

いけない、涙が決壊寸前。
miko-mikuおどけて言いました。


「出前だ。深夜の出前。お父さん、いいとこあるじゃない。
 でも、miko-mikuには何にも言わないんだもんなー。」

「そう。じゃ、秘密だったんだ。」

母、またうれしそう。

このまま。ずっとこのまま…。お願いします。

黙っているmiko-mikuを察したのか、母の方が話題を変えました。

母:そういえば、セーター編むの、どうした?

(続きます)